プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスを率いる野村克也監督が、日ごろ口癖のように語る言葉がある。「勝ちに不思議な勝ちあり。負けに不思議な負けなし」◆たまたま勝つことはあっても、たまたま負けることはありえない。負けるには負けるだけの原因があるのだ、と。サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会で初戦を落とした日本代表チームにも、さまざまな敗因が語られている◆ある人は攻守両面で終盤に連発したミスを挙げ、ある人は選手交代が後手に回った感も否めないジーコ監督の采配(さいはい)に辛い点数をつける。おそらくはそれらすべてが絡み合っての完敗であったのだろう◆豪州に痛恨の逆転負けで「1―3」、1敗はもちろんのこと2点の得失点差が重たい。グループリーグを抜けて決勝トーナメントへ勝ち進むために、日本は限りなく細く、険しい坂道をのぼることになる◆徳俵に足のかかったクロアチア戦が4日後に控えている。「梓弓(あずさゆみ)こころのままに引きしめてなどか一矢のとほらざらめや」(松林飯山)。サムライ・ブルーの面々にはぜひ、幕末の侍が遺詠にこめた強い心をもって戦ってほしい◆敗因を万端きれいに取り除いて勝つに越したことはないが、この際だから贅沢(ぜいたく)は言うまい。勝利の女神さま、あれよあれよの「不思議な勝ち」も可です。