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 <3>紙と電線  
 
miyaさんのような職種の場合、企業とのつきあいが多いので、個人であっても会社にしておく方が何かと有利だ。6年前、区の融資制度で創業資金があると聞いて、新規に“超零細企業”を設立しようと思い立ち、区が設けている創業資金に関するコンサルティングにいさんででかけて行った。

 相手は、miyaさんより年下らしき中年の中小企業診断士。襟の端とポケットに縫いジワがよった(←仕立てが悪いことをmiyaさんはこう表現した)紺の背広を着て、メガネをかけ、剛毛にポマードをぬった人がふんぞりかえって偉そうにたずねた。

 「あんたんとこの業種はなんだあ〜ん?」
 miyaさん「うちはコンピュータのソフトを受託開発しています。法人化しないと支払いを受けるときに、不便なので法人化したいと思っているんです」
 「そうすると、あれだな、情報業というやつだな。だとすると仕入れは紙がメインだな」
 miyaさん「紙とかドキュメント関係の制作プロダクションではなくて、コンピュータのソフトウェアを作ったりしているんですが」
 「作るっていったら紙が要るだろ、ん〜?」
 miyaさん「そうじゃなくて、ソフトウェアなんですけど」
 「じゃあ、箱とか紙が要るだろう」
 miyaさん「いえ、パッケージは作ってないんです」
 「だって、ソフトだろ。ソフトは紙だろ」
 miyaさん「そうじゃなくて、コンピュータで動くプログラムやネットワークの仕事なんです」
 「電線使うだろ、電線が仕入れだよ」
 miyaさん「電気工事の業種じゃないんですけど」
 「じゃ、何も使わないんだったら創業資金なんて要らないじゃないか」
 miyaさん「……(唖然、呆然、だめだ、こりゃ)」

 ここで、miyaさんはスミマセン、さようならと帰ってきた。こんなにもよく会話を覚えているのは、情けなさと腹立ち紛れで印象深かったからだそうだ。区役所の公的な場所を使って行われたコンサルティングだったが、情報関連への理解などそんなものだった。書類を見たら、情報処理業は創業資金の該当する業種に入っていた。 
 

<2005年10月12日>