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底冷えする寒さが続いている。
昔は寒いとこたつの中に入り込んでウトウト寝るのが楽しかったなぁ。いまは和室がないからそんなことはできないが、こたつだけは懐かしい。
「こたつか〜、あ、思い出した。そういえばね」とmiyaさん。 |
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| miyaさんが作ったういろう招き猫 |
<18>こたつの思い出
miyaさんが30歳前後のころ、中央線沿線のバンド友達と久しぶりに仕事で一緒になり、新宿に流れて4人で飲んでいた。
話が弾んで、いつのまにか夜が更けている。
「うち泊まっていきなよ。新宿から電車で近いから」
「4人も泊まれるの」
「だいじょうぶだよ。こたつもあるし」
「そっかぁ、こたつがあると4人ちょうど入れるね。仮眠したら朝早く帰るから、じゃ泊めて」
「朝早くって11時かい」
「いや、そんなに遅くないよ。10時ころには起きるよ」
そうこう言いつつアパートに到着。小説の書けそうな風情である。
「おじゃましまーす」と部屋に入ると、4畳半に立派なベッドがド〜ンとある。
「お、すごいダブルベッドじゃん。部屋は隣にもあるの?」
「いや、これ一つ」
「こたつないじゃん」
「だいじょうぶだよ。いま押し入れから出すからね」
「どこ置くの? どこ置くのさ」
「ベッドの上だよ」
3人は想定外の展開に言葉もない「!!……」
「ベッドの上にこたつって初めてだよ。ふつう、こたつって畳の上じゃないの」
「いや、うちではここが所定の位置なのよ。説明書にベッドの上に置いてはいけないとは書いてなかったよ」
「まぁ、マニュアル書く人もそこまで気がつかないわね」
「とりあえずセットしたからね。あ、こたつ布団はベッドと共用なんだ」
「ダブルベッドの布団だとちょうどこたつにいいねぇ」
「でしょう?」
「入っちゃったはいいけど、出るの、大変だねぇ」
「冷蔵庫の中からビールと乾きものでも出すか」
「わ〜ぉ、出るたびに揺れるね」
一人が立ち上がるとユッサ、ユッサと揺れる。残っている者は一斉にこたつを押さえて、揺れるに任せる。前屈みになっては後ろへオットット。
「なんだか落ち着かないね。ベッドがフワフワしてお辞儀しちゃう」
「対面(といめん)の人に失礼がなくていいんじゃないの。それじゃまるで船徳(桂文楽の十八番の噺)だねぇ」(←こんなことをいうのはmiyaさんである)
お酒を飲みながら「最近何かレコード買った?」
「西口トザワ(←中古のレコード屋)で10枚ほど買ったよ。聴いてみる?」
「いいねぇ。あ、そこんとこ、もう1回かけてくれる」「そこのフレーズ、渋いね」などと酒を飲みながらウダウダ、グダグタ、よた話。
「ところで、4人どうやって寝るの?」
「そりゃ、4人は無理さ。2人はこたつを真ん中に置いてベッドに互い違いに寝る。あとの2人は床だよ」
はい、ジャンケンポン。
「げっ、負けちゃったよ」(←じゃんけんにめちゃ弱いmiyaさん)
「ここで寝たら肺炎になっちゃうよ」
「だいじょうぶだよ。この間他のやつがきたときに、寒いからといって段ボールと新聞紙もってきたから、それ使って。コツはね、段ボールを先に敷いて、その上に新聞紙、乗っかってから全体に新聞紙をかけるんだよ。幅広くかけないと寝返りをうつとすぐどこかにいっちゃうからね。新聞紙かけたら、その上に段ボールをのっけて、座布団を枕にしてね」
言われたとおりにもぐりこむ。う〜寒。
「おっ、結構暖かいじゃん」
「miyaさん、似合ってるよ。違和感が全くないね。すぐ現役でいけるんじゃないの」
「う〜ん、いろいろ覚えておくと後で役に立つかなぁ」
「おれたちはあれだね、上を見ればキリがないけど、下を見れば……すぐこれだね」
「ギャハハハハハハ」
なんでも体験が大事だ。段ボールと新聞紙の組み合わせはかたくなく、意外に寝心地はよかった。新聞紙は湿気を含んでいないので、おろしたての布団のようだった。ただ、寝返りを打つとカサコソうるさいのが難点か。
床に寝た2人はきっとカサコソカサコソ、巨大ゴキブリのような音をたてていたに違いない。が、ドサ回りで培った特殊技能でどんな環境でも熟睡できるので、いっこうに苦にならなかった。
ただし、miyaさんは幼少のころからよく寝たそうで、昼寝をすると、そのまま朝まで寝てしまう子供だった。起こして夕食を食べさせるとものすごく不機嫌になるので、ある日起こしたときにトーストにバターをぬって手にもたせたところ、もったままスヤスヤ寝入ってしまった。昭和の時代には、いかにもいそうな子供である。
miyaさんは20歳まで夜中の0時をこえて起きていた記憶がない。したがって、当時受験生に人気があった、なっちゃんちゃこちゃん、レモンちゃんの深夜放送も、ジェットストリームも聴いたことがなく、除夜の鐘をきいたのはバンドマンになってからである。
「バンドマンって貧乏なの? なぜそんな狭い所に住んでるの。もう少しいいマンションに移ればいいのに」とyururi。
「学生時代から住んでて愛着があるようだよ」
「だってもう少し広い所を借りればいいのに」
「バンドマンの価値観は違うから、本人が気に入ったらどこでもいいんだ。楽器はコントラバスのいいのをもってたよ。でも、置く所がなくて、天井からヒモをぶら下げて支えていたけれど、すぐ弾けるから便利だと言ってたよ」
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