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 <20>シャワー付き新幹線!? 〜19の続き
 大阪に新幹線で行くことになった。Yさんは相変わらずうっとうしい。そりゃ、そうだ。人の性格はそう変わるものではなく、うっとうしさは増すばかり。
 困ったね。あいつも、もうちょっとくだけないとだめだね。
 じゃぁ、まぁ、一つ。そんな阿吽の呼吸で芝居は始まる。新幹線にまだビュッフェがついていた時代の話である。

 「いや〜、朝早いからさ〜、お風呂入れなくて頭かゆいなぁ」
 「そうだね、俺もかゆくてさぁ」

 誰かが離れた席の仲間の所へ行く。 
 「今、ちょっと伏線張ってきたからね」
 「じゃ、ちょっとタオル出してくるわ」といって、トイレに行き、頭をぬらす。しばらくして頭をふきふき、顔もふきふき、「あ〜、さっぱりした」といって戻る。
 
 他の人は、彼を見るなり「あ、早いじゃない、もう帰ってきたの。じゃ、空いてるね」
 「うん、空いてるよ。早く行って来た方がいいよ。あと1時間くらいで名古屋に着いちゃうから」
「じゃ、俺もちょっと行ってくる」
 その人も手順よろしく頭をぬらして「あ〜、さっぱりした」といって戻ってくる。
 
 Yさん怪訝な顔をして「どうしたの?」
 「シャワー浴びてきた」
 「え?なんで」
 「なんでって。新幹線にシャワーついてるの知らないの。みんなついてるよ。こだまはついてないけど。だって朝早い人困るじゃん。あ、失敗したな。神田のビジネスホテルにでも泊まっちゃえばよかったなぁ、朝早いからなぁ」
 
 「あれ、2人はもう帰ってきたの」
 「俺が帰ってきたときは空いてたよ」
 「じゃ、ちょっと行ってくるわ。クリーニングもあるといいんだけど」
 「そこまで要求しちゃ無理でしょ」

 「あれ、Y君、ヒゲが伸びてるけど」
 「朝早いから風呂入る時間なくて」
 「シャワー行ってくればいいじゃん」
 「早く行かないと、お湯無くなっちゃうよ」
 「新幹線にシャワーなんかないでしょ」
 「何言ってるのよ。みんなさっぱりして帰ってきてるじゃない。ジャズはね、なんて言ってる場合じゃないんだから。おジャズなんてもう終わったプロジェクトなんだから」
 
 「ここは6号車だから一番前まで行くんだよ」
 「それ運転席だよ」
 「そこの下にあるんだよ。宣伝はしてないんだからね。知ってる人しか入れないんだよ。運転席のドアをコンコンコンと3回叩くんだよ。そうしたら開けてくれるから、800円でおつりは出ないから、細かいの用意してね。タオル自前だから忘れないでね」
 
 じゃ、と行って出かけていったのを見届け、みんな抱腹絶倒、視察隊がこっそり後をついていくと  「あ、叩いてるよ。出てこないからまだ叩いてるよ。プププ。そりゃそうだよ。2人とも運転してるんだもの」
 車掌室ならば出てくるが、運転室は出てくるはずはない。今年だって運転席に子供を入れた人が免職になったぐらいだ。

 5分位トントントンと叩き、「嘘だったよ」と不満げに戻ってきた。
 「嘘じゃないよ。誰か入ってたんだよ」
 といっているうちに名古屋に着いた。
 
 「また、次の機会に入ればいいじゃない」
 「一応、新大阪行きは、名古屋でサービス終了だから」 
 「あんまり人に言っちゃダメだよ、混んじゃうからね」
 そこで、車内アナウンス「次は京都、京都」
 「あっ、次は京都だって、降りる支度しなきゃ」と網棚の楽器ケースを降ろしだした。
 「あーあ、まだ1時間もあるんだからー」

 「だって、次は京都って言ったよ」
 その次にきかれたときには、「サービス終わっちゃったんだね。ゴメンゴメン」
 

 それにしても、よくこんなにチームワークよく人をだませると思うことだろう。断っておくが、miyaさんは決して言い出しっぺではない。彼らはコソコソ打ち合わせをしなくても、融通はつく。それだけ臨機応変に対応できなければ演奏なんてできない。
 「お、やってるなということは見たら分かるのですぐ合わせられる」というが、よくそんなバカなことを考え出せるとあきれてしまう。これはリアルタイムで話をきくと、miyaさんの身振り手振りの演技もあって本当に抱腹絶倒なんだけど、文章ではうまく伝えられないのが残念だ。

(2005年12月31日)