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<23>だるま市
高崎市内にあった料理屋「な○屋」の息子が高崎観音へ行く途中の道路沿いでフランス料理店を始めた。レストランの真ん中に白いグランドピアノが置かれ、12月は客がたくさんくるので、1ヵ月だけソロピアノをと頼まれた。
高崎か。遠いなぁ。え、おれ一人でいくの?ソロなの?ソロってあまりやったことないからね、といいつつ、でも、いいや、高崎なんて行ったことがないからちょっと行ってくらぁと、miyaさんはでかけた。
クリスマスのころになるとコーラスとか入るからよろしくねなどといわれ、ソロは結構楽だねーと、キャラリコ、キャラリコと弾いて1ヵ月をこなした。
食事は毎日その店のメニューである。注文するとコックさんがハイヨと作って、客席で食べる。今日はハンバーグというと、牛ステーキ肉を刻んで作ってくれるから味はかなり本格的。だが、メニューも3日で飽きてしまった。
キッチンをのぞくと、みんなは賄いの食事を食べている。その日は、鶏団子とゴボウのすまし汁に白菜の漬け物。
「そんなのずるいよ」
「こっちのがいい?じゃ、ここで食べていいよ」
お店の人とすっかり仲良くなって、12月一杯のはずだったのに、1月もいてくれという話になり、高崎は寒いけどいいやと思って、いることになった。
しかし、寒さはかなりのもの、雪こそふらないが、上州名物空っ風の冷たいこと。
正月明けにやってくると、少林寺のだるま市にみんなで行くけどmiyaさんもどう?と誘われた。
当然、行きますとも。
長い参道の両脇でだるまを売っている出店や、いわゆる縁日の屋台が混在してかなりのにぎわい。「スゴイ!」と当然舞い上がる。
お詣りをして、さあじっくりと屋台を見ていこうと、キョロキョロ、あれおくれ、これおくれと、買い食い大会をしていると見せ物小屋が出ていた。そういう類のものが大好きなmiyaさんは、「お、見せ物やってるじゃないか。やっぱり縁日で見せ物小屋行かないと素人でしょ」
ところが、連れはバンドマンではないので気乗りしない様子。
「そんなの見てもおもしろくないよ。嘘ばっかりなんだから」
「いや、内容はどうでもいいんですよ。口上のおじさんにご祝儀を払いに行くのだから」
「何たってこの泥絵の具のおどろおどろしい看板がいいじゃない。口上も因縁もので決まっているねー。塩辛声がたまらないねー」
「しかも、出し物すごいね、蛇女と一糸まとわぬ美女だって」
お金を払って中へ入ると、ちょうど「蛇女」の真っ最中。
かなり高齢のおばあさんがベロベロの着物で白髪頭振り乱してアオダイショウを手にもっている。 本来ならば冬眠しているはずのアオダイショウを無理矢理起こしたものだからアオダイショウも元気がなく、ドロ〜ン、ダラ〜ンとおばあさんの手から垂れ下がっている。
「蛇も迷惑だね、眠いのを無理矢理起こされて、何が災難になるかわからないね」
その蛇をおばあさんがブンブン振り回しだした。
「振り回すのはいいけど、おばあさん、ちゃんと持っててよ。こっちに飛んできたら大変なんだから」といいながら、イヨッと掛け声を出すmiyaさん。
「見せ物小屋は掛け声で盛り上げないとだめですよ」
おばあさんがドッコイショと引っ込んで、陽気な音楽が突然鳴りだした。
口上も華やかに「さぁ、一糸まとわぬ美女の登場だよ〜ん」。
すると、3歳ぐらいの女の子が裸ん坊でステージの端から端までキャッキャッと笑いながらドタドタと回り始めた。それも4〜5周して終わり。
「外に出ようよ。ああ、堪能した。見せ物小屋はこれがいいんですよ。こういう泥絵の具の臭いと掘っ立て小屋の土の臭いがたまらないですよ」
「おっ、お酒売ってるから1杯あおっていきましょうよ」
「おばさん、そのお酒ちょうだい、1杯、そうそうそう、ラベルにだるまが2ついるやつ」
「あ、これ、達磨錦(←だるま2匹かよ)?」
「おばさん、しゃれなの、それ」
「しゃれじゃないよ、このへんはみんなこれ飲んでるよ」
「なんだかへんだねぇ(笑)」
でも、お代わりして2杯のんで帰ってきた。
「いや〜、お正月のお詣りはいいねぇ」
「で、おれたちは何しにいったんだっけ。誰かだるま買ったの」
「おれ、たこ焼きと、ソース煎餅」
「私は、たこ焼きと、林檎飴。酸っぱかったー」
「お酒と、みそこんにゃく、五平餅」
「……」
それでその年の正月は終わった。
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