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サンマで有名な東北地方のある都市へ3日間ドサ回りに行ったときのことである。
演歌のショーは昼夜2回で、8時すぎには終わる。
当然、昼間の休憩時間に、地元の飲み屋を物色しておくのは常識。
「ちょっと色っぽいおかみがやっている飲み屋を探しておいたんですよ」
「お、それはいいね」
といいつつ、毎度のことだから、おかみはにはさほど期待もせず、とりあえずホテルに戻ってからみんな(8人位)で集まって出かけた。
カウンターと座敷があり、お酒も料理もなかなかおいしく、ヨタ話をしながらギャーギャー楽しく騒いだ。
「ここは、サンマの産地ですよ。当然サンマを頼まないと通じゃないね。
おねーさん、サンマの刺身2人前」
「はあ?。今の季節はサンマの刺身ありませんよ。アレは秋でないと」
「えっ、産地は通年で捕れるんじゃないの」
「あんた達、どこから来たの?」
「今朝、東京からですが」
「もう本当に、都会の人はモノを知らないねー。はあー(ため息)。 この季節だと、イカなんかが旬ですねー」
「どうしてもサンマ食べないと、私の立場が」
「もう、しょうがないねー。サンマの開きならあるけど、それでいい?」
「はいはい、サンマなら何でもいいです」
「サンマの開きは、ご飯がほしいね」
「私、骨についている、薄いところはがして食べるのが好きです」
「あそこはうまいね」
よた話。座敷の畳叩いて笑い転げ、さんざん飲み食いして、表に出て歩き始めたところで、みなの足がハタと止まった。
「おれたち、今晩どこへ泊まるんだっけ。ホテルの名前は何だっけ」
「わかんないよ。誰か覚えてないの」
「どっちの方向か、わからないよ」
「あ、人が来たからきいてみよう。すみません。私たちの泊まっているのはどこでしょうか」
すると、その人が「おれ、あんたたち知ってるよ」という。
ここでみんな大喜び。
「おれたちもスターじゃん。ビータ(←旅のこと。バンドマン用語)一筋ン十年、
報われたねェ。おれたちも認められたんだよ」
「そうじゃないよ。あんたら、飲み屋で一番騒いでたろ。おれたちもそこにいたんだ」
「で、私たちはどこへ泊まっているんでしょう?」
「知らないよ、そんなの」
ズッコケ
30分くらい歩き回って前を行く人に再びきいた。
「おれたち、どこへ泊まってるんでしょう」
「○○ホテルだよ。明日早いから早く帰れよ」
「あ、マネージャー(←タレント事務所の営業マネージャー)、すみません。帰って寝ます」
翌朝は6時出発。一同一斉に5時50分に起き出す。
トイレと歯磨きをすませ、納豆でごはんを2杯食べてきっかり6時に出発完了!
「おれたちも一流だね。駆け出しは10分じゃ準備できないんだよ」
バンドマン生活が長いとそういうことだけがたけてくるのである。
■哀愁のラーメン
バスに揺られ、次の会場に12時頃に着いた。
「ラーメン手配しておきました」
「うれしいね、ラーメン食べたかったんだ」
ルンルンで控え室に行くと、サランラップのかかったラーメンが準備されていた。
ところがないッ。汁が1滴もないのだ。
「お汁は、どこかに温めておいてあるんだよ。これに熱いのかけるんじゃないの」
「すいません。ラーメンお汁がないんですけど、どこかにあるんですか?」
「着いたときに、お腹空いてるといけないと思って、早めに出前頼んだんだけど、
麺が全部吸ったみたいだね。すみませんね」
「いえいえ、お心遣いありがとうございます」
「あれ切なかったね〜。汁のないラーメンを初めて食べたよ。
持ち上げると丼の形にラーメンがついてくるんだよ」
このとき、つくづくドサ回りの悲哀を感じたそうである。
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