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     アメリカの医療etc.に関する興味深いお話あれこれ 
 

おばちゃんゴメンネ


手術当日の夜。
生まれて初めて手にしたPCA(Patient-controlled analgesic)のボタンをピコピコ押していた。
それはスイッチを押すと痛み止めのモルヒネ系の鎮痛剤が
点滴のチューブの中に入っていくというものだった。
たとえ何回押しても10分以上の間隔をあけなければ次のドロップは落ちてこないと
説明されたけど本当にそうかどうか、最新の機械に挑戦していた。

術後の痛みと鎮痛剤を最大限に使用したためか気分は最悪だった。
自宅から遠い病院での手術だったこともあり、見舞い客も無く寂しい夜だった。
ご飯もまずかった。
麻酔の時、傷がついたのか咽喉も痛かった。

二人部屋だった。
隣のベッドはメキシコ人のおばちゃん。
聞こえてくる会話からどうやら明日手術の予定らしい。
おばちゃんの周りには家族がひっきりなしに出入りしている。
メキシコ人は大家族が多い。
みんな声もでかいが身体もでかい。
カーテンで仕切られているのに、なぜ体格までわかるのかというと
誰かが口ずさんだ歌に合わせて踊り始めたその大きなお尻が
私のベッドのカーテンを揺らすから。

私のベッドはドア側だった。
来客の多いお隣の人々は部屋の出入りが多い。

術後の私は病院で支給された寝巻き1枚で下着も何もつけていない。
ベッドの隣にあるトイレへ行く時は点滴のコンセントを抜いて
下肢の静脈血栓症予防のために両足に巻きついているカフスをはずし、
肺のドレナージチューブのバッグをかかえ移動する。
部屋を出入りする隣人とトイレ行き準備が重なると嫌な気分だった。

部屋のドアを開けっ放しにするので、私はいちいち閉めた。

そのうち舌打ちしながら、音を立てて閉めた。それが何回か繰り返された。
おばちゃんの娘と思しき人が、この部屋のドアは開けておくようにと
ナースが言っていたわと私に言う。

陽気なメキシコ人家族の笑い声が聞こえる。誰かがまた踊っている。
カーテンが揺れる。
カーテンが数センチ開く。

不快感を表し荒々しく閉める。
私は爆発した。
おばちゃんに言ったのか、その家族に言ったのか覚えていない。

術後の私にはあなた方の声と部屋への出入りの多さが非常に不愉快だ。
同室の患者への配慮が無いアナタの常識は私には全く理解できない・・・
ってなことを怒りで震えながらまくし立てた。

しばらくしておばちゃんの鼻をすする音が聞こえた。
そしてしばらくしておばちゃんは他の部屋へ移って行った。
私は一人部屋の住人になった。

後味が悪かった。
退院するまでずっと嫌な気分だった。

口ずさんでいた歌も踊りも騒ぎ立てるほどたいしたことはなかった。
模範患者でいられるゾ、くらいに思っていたのにとんだ間違いだった。
私は嫌な患者だった。
八つ当たり、意地悪、ひがみ等の副作用が、私の服用している薬やモルヒネにないか
一生懸命考えたけど思いつかなかった。

痛恨の一夜となりました。
もし次に手術を受けることになったならケチらず個室を選ぼう。
状態の悪い患者の八つ当たり、意地悪、わがままは
大きく受け止めようと心に誓いました。

おばちゃんごめんね。
 

<2006年4月12日>